金継ぎ

2021年04月01日 : fujita

コロナ禍でステイホーム時間が長くなっているので、
家の中で出来る事を何か始めてみようと昨年末から考えていました。
そこで思いついたのが、以前から興味のあった金継ぎです。
金継ぎとは割れたり欠けたりしてしまった食器を漆と金粉を使って修復する技法です。
引越で割れてしまったけれども捨てられずにいたお皿や、
少し欠けていてもそのまま使っていた湯飲みなど、
探してみると直したい食器が家にいくつかありました。
私は不器用なので金継ぎを上手に出来る自信がなく躊躇していましたが、
年明けに緊急事態宣言が発令されたのを機に、
思い切って金継ぎの初心者セットを購入し挑戦してみました。
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金継ぎの工程は、教則本やセットになっている商品によって
多少の違いはありますが、およそ10工程ありました。
下地の漆を塗った上に、漆と小麦粉など天然素材で作った接着材を使って接合し、
更に隙間を埋める為の漆や仕上げの朱漆などを重ね塗りして磨いていきます。
漆を塗るたびに3~4日、接着の際は3週間も乾燥の時間が掛かり、手間と根気が必要でした。
最終段階では、接合した部分に薄く朱漆を塗って、
半乾きになったらその上に真綿に付けた金粉をそっと蒔きます。
この時、朱漆の乾燥が足りないと金粉が漆の中に沈んでしまいますし、
乾き過ぎていると金粉が定着せずに剥がれてしまう為、
どちらも美しい金色に仕上がりません。
この工程が一番難しく想像通りの仕上がりというわけにはいきませんでしたが、
それでも2ヶ月かけて仕上がった器には愛着が増しました。
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実際に金継ぎをしてみて驚いたのは、接着する際には小麦粉と漆を混ぜた麦漆、
欠けた部分を埋める際にはご飯を練って漆と刻芋綿(綿を細かくした物)や
木粉を混ぜ合わせたものなど、工程によって漆に様々な素材を混ぜて
強度や接着力を増している事です。
金継ぎの歴史は室町時代に始まったそうで、
当時の職人たちが身近な物を使って試行錯誤しながら
技術を確立してきたのだろうと想像されます。
最近は100円ショップにも立派な食器が売られているので、
金継ぎセットを買って更に手間と時間をかけて壊れた食器を修復する事は、
却って贅沢な事かも知れません。
ですが、先人たちの知恵と努力に思いを馳せながら工程を重ねると、
器をこれまで以上に大切に扱わなければという気持ちが自然と芽生えてきて、
とても充実したおうち時間を過ごす事が出来ました。

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